「咲来さん。今回は、よく頑張りましたね」
「え?」
数学の先生が私にテストの答案用紙を渡す際、ニコッと笑いかけてくれた。
「うそ……」
返却された答案を見た私は、自分の口元を手でおさえる。
私の名前の右斜め上に、赤ペンで大きく書かれていた数字は「86」
なんと、数学のテストの点数は86点だったのだ。
前回の中間テストでの点数が、赤点ギリギリの40点だったから。まさか、こんなにも点数が上がったなんて信じられないけど。
「やったぁ!」
何よりも嬉しい気持ちが勝った私は、ここが教室だということも忘れ、両手で思いきりガッツポーズをする。
私が紫苑くんの席のほうへ目をやると、彼が私のほうを見てくれていたらしく、目が合ってしまった。
「……っ!」
私が視線を逸らそうとしたとき、紫苑くんの口がゆっくりと動く。
『良かったね』
席が離れているため、声はよく聞こえなかったけど。紫苑くんは確かにそう言ってくれたのだと分かり、私は更に嬉しくなった。



