紫苑くんとヒミツの課外授業



私は、スクールバッグの中からラッピングされた袋を取り出す。


「いつも勉強教えてもらってるお礼に、クッキー焼いて来たんだけど……」


ただの友達なのに、手作りのお菓子なんて重いかな? とも思ったけど。

私にできることって、お菓子作りくらいしか思いつかなかったから。


「え、うそ。それ、俺にくれるの? ありがとう!」

紫苑くんは、笑顔で受け取ってくれた。


「咲来が俺のためにわざわざ?」

「うん。でも、もし手作りが嫌とかなら、無理に食べてくれなくても……」

「そんなの嫌なわけないじゃない。俺甘いもの好きだから、すげぇ嬉しいよ。ね、食べて良い?」


私がこくりと頷くと、紫苑くんはさっそく袋からクッキーをひとつ摘み、口の中へと入れる。


「んー、美味い!」


クッキーを食べる紫苑くんの手が止まらない。


「やばい。これ、美味すぎる」


あっという間に、クッキーを平らげてしまった紫苑くん。

まさか、こんなにも喜んでもらえるなんて。


「ねぇ、咲来。また作ってきてよ」

「うん」

「俺、咲来の手作りのお菓子なら毎日でも食べたい」


紫苑くんの笑顔が弾ける。


普段は、大人っぽく見える紫苑くんだけど。

笑顔はまだあどけなくて。なんだか可愛い。


「あっ、紫苑くん。口の端のとこに、クッキーの粉がついてるよ」

「えっ、どこ?」

「もう少し、左……」


私の言葉に合わせて紫苑くんが指を動かすも、粉とは違うところに触れてしまう。


「ああ、違う……」

「ねぇ。それじゃあ、咲来がとって?」