数学の授業が終わり、休み時間。
お手洗いに行った帰り、私が廊下を歩いていると、少し前を歩いていた男の子が何かを落とした。
彼は落とし物に気づいていないみたいで、そのまま歩いていってしまう。
「あの、待って! これ、落としましたよ」
私は彼が落としたハンカチを拾い、慌てて追いかけて声をかける。
するとこちらを振り返った男の子を見て、私はハッとする。
落とし物をした彼は、クラスメイトの滝川くんだったから。
「ハンカチ、どうぞ」
「水瀬さん、ごめん。ありがとう」
「いえ……」
私は、下を向いてしまう。
「どうしたの、水瀬さん。最近、なんか元気ないよね?」
「え?」
「いや。水瀬さん、いつもニコニコしてることのほうが多かったから。少し気になってて。あの……何かあった? 俺で良ければ、話聞くよ?」



