鏡と前世と夜桜の恋


最近、蓮稀はよく雪美の話し相手になってくれる。咲夜がおすずに呼び出され会えない寂しい時間を埋めるかのように…

「この時刻に呼び出しの文を渡されて来てみれば “ 何奴 ”とは…?」

そう言って雪美の頭を優しく撫でる。

ほっとしたように目を細める… その表情を見るだけで蓮稀の胸は痛んだ。


(また無理して笑って… 咲夜と一体何があった?)

雪美は

弱いくせに無理に笑い
怖いときほど強がる。

" 雪美を頼む "

咲夜に頼まれたのもあり蓮稀は雪美への想いを隠し胸に秘めながら雪美の相手をしていた。


頼まれたから会いに行く…

そう自分に言い聞かせれば楽なのに蓮稀の本音は別の場所で疼いていた。

頼まれなくても会いに行くつもりだった、雪美が辛そうな顔をさせるのは嫌だから

この気持ちは誰にも言えない。





雪美は雪美で咲夜への気持ち蓋をしようと心に決め、少しずつ蓮稀の優しさに甘え始めていた… 蓮稀は物知りで、会う度に色んな場所へ連れて行ってくれる。

「蓮稀、今日はどこへ連れて行ってくれるの?」

雪美が楽しそうに笑うと蓮稀は少し照れたように目を逸らし " ついてこい " と、だけ言った。


暫く歩き、人気のない道を抜けると視界がひらけ蛍の光がふわりと舞う蓮池に出た。





「わああああ! 」

「ヘイケボタルだ」

蛍の光に目を輝かせる雪美の隣に立つ蓮稀に " ヘイケボタル? " と、問いかけその場に座る。

「雌が雄を誘引する時雌の光は揺らめかず強い光を発する… まるでお前みたいだ」


雪美は目を丸くした。

「わ、私みたい?」

蓮稀は月の光を背にして雪美を見た分かってない顔が余計胸に刺さる。

「お前が俺を誘惑する時、少しだけ妖艶になる、その仕草を見ると俺は抗えなくなる。蛍みたいに、な… 」

本音を言うつもりなんてなかった、けれど蛍と夜風が蓮稀の心の蓋を緩ませた。