鏡と前世と夜桜の恋


指先に触れた花の冷たさがなぜか胸に落ちる。

そのまま外へ出る。教会の扉を閉じると、夜気が少しだけ強く吹いて髪を揺らした。

気づけば無意識にシロツメグサを編み、輪にしたそれをためらいながらも自分の左手の薬指へ…

 「…誰との、つもりなんだろう」

1人なのに、1人じゃないような錯覚。


子供の頃からずっと隣には当たり前のように咲夜がいた。

雪美はまた振り返る。
けれど、もちろん誰もいない。

「帰らなきゃ…」

そう呟く声が小さく震えた。指のシロツメグサは壊れやすく、触れればすぐ崩れてしまいそうで。それでも雪美はそっと手のひらで包む。


教会を出た帰り道。

夜の静けさは孤独の匂いがした。

いつもと同じ道のハズなのに不思議と違う感覚を雪美は感じていた。それでも不思議と、足取りだけは軽かった。

まるで指に巻いた白いシロツメグサの輪が咲夜の存在を残してくれたように…