その場に崩れ落ちる雪美を見つけた咲夜
「ゆき… 」
今にも抱きしめたい、否定したい。全部話して誤解を溶かしたい。だがそれをした瞬間おすずは雪美を殺す… 鈴香と同じように。
深呼吸をひとつ、覚悟をひとつ、咲夜は最も大切な人を救う為に最も残酷な選択をする。
「ねえ、さく… なんで…?」
追いかけて来た咲夜に気付いた雪美は、涙で充血した目で相手を睨み付ける… 咲夜は胸を刺されるような痛みを飲み込み、あえて冷たく吐き捨てるように言った。
「… あーあ、もういいや。お前みたいなガキ好きじゃなくなったんだよ」
自分の心を自分で踏みにじるように… 喉が焼けるほど痛かった。
これでいい、ゆきが生きてくれるならそれでいい。俺の心なんかどうだっていい。
「…本気で言ってるの?」
雪美はひりつくような声で問い… 次の瞬間、表情がゆっくりと崩れていった。
「それなら… さくは死んで」
「……。」
「約束でしょ?一緒にいるって…離れる時は“ 自分が死ぬ時 ”だって… そう言ってたじゃない… 」
涙が溢れ震える雪美は突然狂った様に笑いだす
「あははっ、ねえ咲夜… “ 浮気された挙句、別れましょう ”って?ふふ… あはは、いい加減にして!!」
雪美は帯の中から小刀を抜き咲夜に向かって放つ
その動きと速さに迷いは一切なく
" グサッ "
咲夜の肩に鋭く刃が入り鮮血がにじむ。
「ゆ、ゆき…」
咲夜は痛みに歯を食いしばるが、雪美から目を逸らさない… その瞳には、憎しみも怒りもない。ただ、深い悲しみと壊れるほどの愛情だけ。
ごめんな… ゆき…
俺が全部悪い…
本当に、ごめん…
それだけを心で繰り返しながら雪美の腕をそっと掴み小刀を取り上げた。
「…返してよ、嘘つき!あんな風に… あんな風におすずさん抱いて… 嫌い… 嘘つき…!!!」
雪美は咲夜への思い出をひとつひとつ壊すように自分の髪からかんざしを抜いて…
" ドスッ!! "
咲夜の腕に思い切り突き刺した。

