申又は雪美の耳元で嗤うように言う。
「目に焼きつけな。あの2人はこういう関係なんだよ」
その声が咲夜の胸を裂くように響いた。
(違う。違う、ゆき……!)
「離して!やだ!私は、おすずさんが話しがあるというから来たのに!!!!」
「あーあ、早かったね?今取り込み中だったんだよ」
咲夜が身を起こそうとした瞬間、おすずは雪美に分からないよう咲夜の髪を掴み無理やり押し伏せた。
「動くんじゃないよ!小娘の前でみっともないねえ、そう言えば蓮稀様もお前と同じ顔をしてたよ」
手を引けと言ったのは陽菜の根回しじゃなくおすずさんと愛し合ってるから?
… 私は邪魔な存在?
咲夜と目が合った瞬間、雪美はぎゅっと唇を噛み小刻みに震えながら呟いた。
「… 帰ります、ありがとうございました」
おすずに深く頭を下げ、そのまま背を向けて屋敷を出た。ただの礼ではない。 “ もう二度と関わりません ”の意思表示を込めて。
足元が崩れそうな声だった。
どうして?私との約束は?
ずっと一緒だって… 陽菜さんじゃなくこの人と隠れて愛し合ってたの?目の前に居る咲夜が遠い人のように感じる…
「ゆき!」
咲夜の叫びも虚しく、雪美は涙を噛み殺し背を向けて走り去った。
「…っ」
胸が裂かれるような痛みだった。
ゆき…ごめん。本当に…ごめん。謝って許される話じゃないことは分かってる。
雪美が去った後、おすずの部屋は静寂に沈み、咲夜は雪美を追いかけようと巨漢を突き飛ばし慌てて起き上がる。
「私の命令に逆らってあの小娘を追いかけるつもりかい?」
咲夜は気持ちを抑えきれず雪美の後を追った。
「うっ… 」

人通りのない路地裏。雪美は壁に手をつき、込み上げる吐き気を抑えられず胃の奥のものを吐き出していた。
頭に焼き付いて消えないあの光景。
咲夜がおすずに押し倒され、拒んでいるように見えなくて…
自分が知らない咲夜の顔…
「さく… なんで… 」
声は震え、涙と唾液が混じる。

