鏡と前世と夜桜の恋

目を閉じると雪美の震える顔、泣きそうな瞳、恐怖に怯える姿が浮かぶ。雪美を傷つけることだけは何が何でも絶対に避けたい。

「…ど、どうすればいい。縁談を受ける意外に… どうすれば俺達のことを見逃してくれる」

おすずは扇子をパチンと閉じる。

「簡単さ、あたしが望む “ 従順 ”になりな」


陽菜の縁談の話しなど
おすずにとって咲夜を呼び出す口実

「咲夜さんも蓮稀様のように、毎日這いつくばって息の仕方まで教わるくらいに、ね…」

嫌悪が背骨を走る。

なんで俺がこんな奴の言いなりに… だが雪美だけは巻き込めない、咲夜は奥歯を噛みしめた。

その様子を見ておすずは満足げに笑う。


「そこに横になりな、蓮稀様もよくそこで息を詰まらせてたよ。“ 死んだ方が楽だ ”って顔をしてね」

窓から差し込む光が揺れ咲夜の影が細長く伸びる。

おすずは厚い衣の紐を音もなく解き、自らの重みを咲夜に被せるように近付いていく。

その瞬間
咲夜の耳元で低く湿った声が落ちた。


「蓮稀様はずっと私の犬だった、鈴香が死んでから抜け殻で使えやしない。小娘との縁談を認めて欲しいのならお前も今日から私の犬になることだね」

鈴香の事がある。逆らうと雪美に何をするかわからない… 悔しそうに唇を噛み締める咲夜。

「蓮稀様は毎日毎日私の望み通り全身に額を擦りつけてたよ」


「咲夜さんはどう楽しませてくれるんだろうねえ?」

咲夜の手は震えた。

恐怖でも怒りでもなく、屈辱… おすずはその震えを見て、楽しむように咲夜の顎を掴んで上を向かせた。

「蓮稀様に負けず整った良い顔立ちだねえ、流石弟… ほら、早くその顔で蓮稀様よりも私を気持ち良くさせな」