鏡と前世と夜桜の恋


季節は無情にも、ただ自然と移り変わっていく… 凍てついた冬が誰の意思とも関係なくやがて雪を溶かし、土の奥から春を押し上げるように。

毎日毎日、おすずが声を張り上げるたび、喉が焼けるように熱くなる。



苛立ちが、冬の氷が割れて水が噴き出すように身体の奥底からせり上がってくる。


それでも世界はおすずの怒りとは無関係に温度を変え、季節だけは静かに冬を後ろへ春を前へと送り出していく。まるで、自分ひとりが冬に取り残され、周囲だけが勝手に春へ向かっていくように…

今の蓮稀様は人形と変わりない。

違う… 私がずっと手に入れたかった蓮稀様はこんな人間のはずがない。

おすずは胸の奥に、ひどく冷たい焦りを感じていた。怒りよりも恐怖に近い感覚。

(壊れたのか?私が欲しかった “ 蓮稀様 ” が、どこにもいないじゃないか。それほどまでにあの小娘を大切にしていたと言うのかい?自分の気持ちに蓋をする為に利用した身代わりの存在のくせに… こんなに変わるなんて)


" 鈴香 "

あの小娘の名が胸を刺しただけで、血が沸騰しそうになる。全てを奪えたはずだった。鈴香を牢に閉じ込め、息を奪い、蓮稀から “ 未来 " さえも奪った。全て思い通りだと思っていた。

なのに。

「蓮稀様、どうしてこっちも見ない?私を無視するんじゃないよ!」


蓮稀は動かない。まるで魂だけ鈴香の後を追ってしまったように… その静けさがおすずには堪え難かった。

(私よりあの娘を選んだままだというのか)

考えた瞬間、理性が一気に吹き飛ぶ。

髪を掴み乱暴に顔を上げさせる。

「お前は私の物!あんな小娘… とっくにこの世にもう居ないんだよ!!!」