鏡と前世と夜桜の恋

「なんで… 鈴香ちゃんのこと… 嘘ついたの!!!」

泣きながら吐き出す言葉は、子供のように震えていた。感情が抑えきれなかった… 蓮稀が一歩、雪美に近付こうとすると雪美は身を引いた。

「来ないで!2人共信じられない… 」

蓮稀の目が明らかに揺れた、叱責も怒りも全て飲み込んだような顔…


咲夜も拳を強く握り目を伏せる。

「…雪美、俺達は嘘をついた訳じゃない」

咲夜が絞り出すように言う。
しかし雪美は首を横に振る。

「嘘じゃない、花嫁修行中だって!終わったら滝に行こうねって話してた… 隠して、それは嘘と同じよ…!」

蓮稀は咲夜を一瞬睨みつけそれから雪美に視線を戻した。


「… すまない雪美、咲夜に口止めしたのは俺だ。お前を守る為だと思っていた。けど… 間違いだった」

蓮稀の声が震えていた、蓮稀がこんな声を出すのは初めてだった。

「怒っていい、嫌ってもいい、ただどこにも行くな。俺はもう雪美まで失いたくない… 」

咲夜が横で小さく息を呑む。


雪美の胸の奥が、その言葉に触れて更にぐちゃぐちゃになった。泣き声が漏れ膝を抱えるように丸まる。

「嫌だよ… 鈴香ちゃんが苦しんでるのに… 何も知らずに笑ってた私、馬鹿みたいで… 」

その言葉を聞き、蓮稀は唇を噛みしめ、咲夜は目を伏せたまま震えた。雪美の痛みを正面から受け止めていた。


蓮稀がゆっくりと手を伸ばす。

「… 雪美、俺達が悪かった。だから… 泣くな」

その手は震えていて決して強引には触れない、咲夜もそっと雪美の横にしゃがみ込む。

2人の声に包まれ雪美の涙は更に零れ落ちた。泣き疲れて身体が揺れ、雪美は2人から逃げずただずっと泣き続けた。