俺が宴に呼ばれた理由は、鈴香お嬢様に届いた殺害予告がきっかけだった。目に見えない犯人から娘を守って欲しいと、



日頃『用心棒』を職とする俺への護衛依頼。お嬢様の父親は噂によると過保護過ぎるほど娘を溺愛している方らしく…めでたい宴の最中、娘に何かあったらと酷く心配していた。



俺の任された任務は、殺害予告を出した犯人を探し出し捕まえる事と宴当日まで24時間体制でのお嬢様の護衛。


そんな大層なお嬢様なのかよ … と、内心思いながらも雇われた身であり仕事の一環。この頃の俺は、得体の知れないお嬢様と出会った事によって、自分の人生が180度変わるなど思いもしなかった。






ーー 依頼を受けた例のお嬢様と直接会話を交わしたのはその数日後のこと。







この女は、お屋敷近くの桜の木の下で寝息を立てながら昼寝をしていた。



この女がお嬢様?


殺害予告を受けていると言うのになにを呑気な… 警戒心がまるでない女を起こそうと声を掛けるが、目覚める気配なく俺は思わず苦笑い。



あまりにも呑気すぎるだろ …


気持ち良さそうにすやすや眠るお嬢様の鼻を指で摘んでみる。鼻を摘まれ慌てて飛び起きた女は俺を見るなり今更警戒しながら恐る恐る問いかけて来た。




「誰?もしかして私を殺しに!?」


「その逆です」




この人は何故こんな所で寝ていたのか、自分の立場の自覚が無い女に対してため息を吐いた俺は、お嬢様の隣に腰を下ろし " こんな所で何してたんですか?" と、呆れ気味に問いかける。



お嬢様本人から聞いた話だと、桜が大層好きらしく暇あればこの場所に来て穏やかな時間を過ごしているようだった。



突然鼻歌を歌い出すお嬢様。お嬢様は歌が本当に上手く… お嬢様の歌声に惹かれた俺は時間を忘れずっと隣に座っていた。


暫くそこに居ると使用人が「鈴香お嬢様どこですか!?」と、血相を変え探し歩いて来た。それに気付いた彼女は立ち上がり「やば!勉強サボってたのに…またね!」と、屋敷の中へ。