数日後の夏の名残がまだ残る夕刻。
障子越しに、茜色の光が部屋をやわらかく染めていた。
今日も、咲夜と雪美は雪美の好きな団子を食べに団子屋の隅に並んで座っていた。香ばしい匂いが漂い、遠くでは子どもの笑い声がかすかに聞こえる。
「ねぇ、咲夜」
雪美がふと顔を上げる。膝の上で手をぎゅっと握りしめ、少し照れたように続けた。
「どうした?」
「最近みんな忙しそうだよねー、だから寒くなる前に日を決めて皆で滝を行きたいなって…」
その言葉に、咲夜の胸が微かに痛んだ。
鈴香… 名を聞くだけで今もあの日の雨音と冷たい鉄の匂いが蘇る。
「滝か…」
「そうそう!寒くなる前に!」
目を輝かせる雪美の視線に耐えきれず咲夜は視線を逸らし、遠くを見たふりをした。
「…鈴香は今、少し遠くに行ってる。政条家の当主の妻になるため、花嫁修行に行ってるんだ」
嘘だった。
けれど、これが蓮稀との約束…
牢に入らされた鈴香の姿を思い出しながらも、笑顔を崩さぬように… そして、何より雪美まで巻き込みたくなかった。
そうなの?頑張ってるんだなぁ鈴香ちゃん。元気にしてるかなぁ… 」
雪美は膝の上で手を重ねそっと笑った。その笑顔があまりに真っ直ぐで咲夜は言葉を飲み込むしかなかった。
「もう一度みんなで滝に行けたらいいな。さくと、鈴香ちゃんと、蓮稀お兄ちゃんと… 」
“ 蓮稀お兄ちゃん ” その呼び方に、咲夜は一瞬驚くがすぐに静かに目を伏せた。
「あ、鈴香ちゃんが私達姉妹になるねって言ってくれて… だから私、蓮稀のこと“ 蓮稀お兄ちゃん ”って呼ぶことにしたの!」
「鈴香とそんな話をしてたのか… 」
「うん。お祝い伝えに行った時!私、嬉しくて… 大好きな鈴香ちゃんが、お姉ちゃんになるんだよ。だって私は、咲夜のお嫁さんだもーん!」
雪美の胸にあの蓮園での出来事が蘇る… 切なさが波のように押し寄せ、それを悟られぬよう、ただ咲夜に明るく振る舞った。
障子越しに、茜色の光が部屋をやわらかく染めていた。
今日も、咲夜と雪美は雪美の好きな団子を食べに団子屋の隅に並んで座っていた。香ばしい匂いが漂い、遠くでは子どもの笑い声がかすかに聞こえる。
「ねぇ、咲夜」
雪美がふと顔を上げる。膝の上で手をぎゅっと握りしめ、少し照れたように続けた。
「どうした?」
「最近みんな忙しそうだよねー、だから寒くなる前に日を決めて皆で滝を行きたいなって…」
その言葉に、咲夜の胸が微かに痛んだ。
鈴香… 名を聞くだけで今もあの日の雨音と冷たい鉄の匂いが蘇る。
「滝か…」
「そうそう!寒くなる前に!」
目を輝かせる雪美の視線に耐えきれず咲夜は視線を逸らし、遠くを見たふりをした。
「…鈴香は今、少し遠くに行ってる。政条家の当主の妻になるため、花嫁修行に行ってるんだ」
嘘だった。
けれど、これが蓮稀との約束…
牢に入らされた鈴香の姿を思い出しながらも、笑顔を崩さぬように… そして、何より雪美まで巻き込みたくなかった。
そうなの?頑張ってるんだなぁ鈴香ちゃん。元気にしてるかなぁ… 」
雪美は膝の上で手を重ねそっと笑った。その笑顔があまりに真っ直ぐで咲夜は言葉を飲み込むしかなかった。
「もう一度みんなで滝に行けたらいいな。さくと、鈴香ちゃんと、蓮稀お兄ちゃんと… 」
“ 蓮稀お兄ちゃん ” その呼び方に、咲夜は一瞬驚くがすぐに静かに目を伏せた。
「あ、鈴香ちゃんが私達姉妹になるねって言ってくれて… だから私、蓮稀のこと“ 蓮稀お兄ちゃん ”って呼ぶことにしたの!」
「鈴香とそんな話をしてたのか… 」
「うん。お祝い伝えに行った時!私、嬉しくて… 大好きな鈴香ちゃんが、お姉ちゃんになるんだよ。だって私は、咲夜のお嫁さんだもーん!」
雪美の胸にあの蓮園での出来事が蘇る… 切なさが波のように押し寄せ、それを悟られぬよう、ただ咲夜に明るく振る舞った。

