鏡と前世と夜桜の恋

家臣たちは誰ひとり口を開かず、うつむく者、目を逸らす者、ただ沈黙が続く…

その中、鈴香は覚悟を決め唇を噛み締め、全ての罪を被るつもりで " 全て私の責任です " と、深く頭を下げた。

「… 待て」

鈴香の言葉を聞き蓮稀の声が低く響いた。


座敷内の空気が一瞬にして張り詰め
誰もが動きを止め蓮稀を見た。

「鈴香はそんなことするようはおなごでは無い、この話は語弊があります」

「蓮稀様… 貴方までこんな小娘を庇う気かい!」

おすずの扇はぴしゃりと閉じられ、蓮稀はその視線を真正面から受け止め言葉を続けた。


「鈴香はその様な事をするおなごでは無い」

「蓮稀様… 貴方までこの小娘を庇う気ですか!」

おすずの扇はぴしゃりと閉じる。

蓮稀はおすずの視線を真正面から受け止め言葉を続けた。

「鈴香は溺れる雪美を助けたまで、人に危害を加える様な真似は… 「うるさい!うるさい!うるさーあああい!」


甲高い声が割り込み、おすずは蓮稀を睨みつける。

おすずは濡れた目元を押さえながらもその口調には毒がある… 同じく嘘の涙を流す娘の陽菜。

「蓮稀様、貴方までこの小娘の味方を… 自分で認めたのに何故?あの女は政条家に入り込む為、蓮稀様を惑わせた鬼女。陽菜を突き落としたのも嫉妬から… 」


「黙れ!!!」

蓮稀の声が雷のように響いた、普段決して怒声を上げぬ蓮稀の一喝にその場にいる全員が驚きを隠せず目を見開く。

「鈴香を侮辱するな、鈴香は己の身を投げ打って雪美を守った女だ。お前達のように涙で嘘を飾ることなどはしない!」

「は、蓮稀様… な、なんてことを…!」


おすずの顔は青ざめ、陽菜は再び涙を流し、母の袖にしがみつく…

蓮稀の言葉におすずは怒りに狂い、奇声を上げた後、氷のように冷たい声で言った。

「家の恥を庇うとは、当主の息子として恥を知る事だね〜 この場の決定は覆らぬ、鈴香は牢へ。…それ以上申すなら蓮稀様、あなたとて例外ではないよ」





" 当主 "

その言葉を聞き、蓮稀は拳を握りしめそれ以上何も言えず… 瞳には怒りと鈴香を救えぬ無力さが交錯する。

鈴香はそんな蓮稀を見て静かに微笑む

その笑みはまるで " 大丈夫だから " と言っている様で… 鈴香は護送の者達に両腕を掴まれ鎖の音を残し、祝いの席から連れ去られていった。