人生の総合評価を提示すれば、俺は幸せな方だと思う。生い立ちはどうであれ、江戸の世で最も裕福な家系に拾われた俺は、祝言を挙げる歳まで自由気ままに生きてきた。
俺に対して反抗する者もいなければ、この頃の俺は手に入れたいものはなんでも手に入れられた、ただ1つのモノを除いては...
「関 (せき)の息子も祝言が決まったそうだ。お前もそろそろ考えてはどうだ?」
ーー誰が持つかそんなもの。
ちらほら耳に入る村の祝事に俺も便乗させようと、育ての父『龍之介 (りゅうのすけ)』と母の『ミツ』は、縁談を持ち帰っては俺におなごを進めるがどれも気が乗らず興味がなかった。
そんなある日......
俺は『龍之介』から仕事を請け負い、某お屋敷で行われる『鈴香』お嬢様の婚約発表の宴に出席するよう命じられる。
鈴香お嬢様は、そこそこ有名なお嬢さんらしく彼女が主役の宴が後日盛大に行われるそう…
一人で顔を出すには気が引けた俺は知り合いの花魁『紫 (ゆかり)』を連れて行く事にした。