鏡と前世と夜桜の恋


蓮稀は何も言わず、雪美の頭を撫で、懐から小さな包みを取り出す。

「これは… 咲夜が最期まで持っていた物だ」

包みの中には――

彼岸花、そして、桜の柄のしおり。







裏面には血がついていた。

雪美の指が震えた。

それを受け取った瞬間、夢で見たログハウスでの咲夜との思い出が脳裏をよぎった。


湯気。

月明かり。

咲夜の笑顔。

「見ておらぬ!」

「嘘つき」

―― あの人は、もういない。

「…さく… 」

雪美は、しおりを胸に抱いた。

そして、とうとう理解してしまった。

「… さくは… 死んだの…?」

蓮稀は答えなかった。

その沈黙が、すべてを物語っていた。



「いやっ… 」

雪美の呼吸が乱れる。

「嫌…!!」

布団から起き上がろうとする。

「雪美、やめろ!」

「さくのところへ行く… 」

近くにあった簪へ手を伸ばした。

その瞬間――。

蓮稀が雪美を止めた。

「やめろ!」

「やだ!!私もさくのところに行くの!」







雪美は泣きじゃくった。


「さく… ひとりぼっち… !!」



蓮稀の顔が歪む。

そして雪美の肩を掴んだ。

「咲夜はそんなこと望んでいない!」

「分からないじゃない!!」

「なら、俺が分かるまでそばにいる!」

蓮稀の声も震えていた。

「咲夜の分まで俺と一緒に生きていくんだ。雪美」

雪美はただ泣いた。