ひどく懐かしい匂いから始まった。
薪のはぜる音。
湯気に混じる、木の香り。
雪美は、咲夜のログハウスのような家の古びた木の浴槽に身を沈めていた。
江戸の夜は静かだった。障子の向こうから淡い月明かりが差し込み、湯気が白く揺れている。
「… ふぅ」
雪美が肩まで湯に浸かりほっと息を吐く
その時だった。
" がらり "
「ゆきはどこ行ったんだ?俺は風呂に入るぞー?」
何も知らない咲夜が、戸を開けた。

「…え?」
雪美と咲夜の目が合う。
一瞬。
二人とも、完全に固まった。
「――いやあああっ……!!/// 」
雪美は慌てて胸元を両手で隠し、湯の中で身を縮めた。
「なっ…!」
咲夜も顔を真っ赤にする。
「あ、え、あ……!」
慌てて戸を閉めようとする――のだが、その一瞬。
咲夜の視線が、思わず雪美へ向いてしまった。
「…っ」
「咲夜っ!!」
「す、すまん!!入っているのを知らぬまま、入ってしまった!」
「もう!早く出て!」
「わ、分かった!」
咲夜は慌てて背を向ける。
けれど耳まで真っ赤になっている。
「…見た」
雪美が小さく呟く。
「…見ておらぬ!」
「見たでしょう!」
「… ほ、ほんの一瞬だ!」
「やっぱり見たんじゃない!」
「…っ!」
雪美の声に、咲夜はさらに赤くなる。

