「ゆきちゃん危ないからもう少しこっち… 」
はしゃぐ相手に声を掛ける鈴香の配慮を見た蓮稀は無言で優しく雪美の手を引いた。
「あ、ありがと… 」
徐々に赤くなる雪美の頬… 咲夜は2人の繋いだ手が妙に自然に見えて腹立たしく、滝の飛沫を受けながら小さく息を吐き冷たい空気が胸に刺さった。
(俺が守ると決めたのに)
けれどそれを口に出す勇気はない。強がりと照れ隠しが喉を塞いでしまう… 滝を見つめる雪美の背中を見て心の奥で呟いた。
-- 次こそは俺が守る。
-- もう二度と誰にも触れさせたくない
滝の音が響く…
まるで咲夜の決意を試すように幾重にも重なって空へ昇っていった。
「おい、ゆき!向こうに鯉もいるぞ!」
蓮稀に向ける雪美の表情が気に食わない… 咲夜は蓮稀から雪美の気を逸らす為、違う話題を仕向ける。
「咲夜も見て、虹よ虹!!」
興奮気味の雪美は笑って振り返るが、その無邪気な笑顔が咲夜の胸を余計にざわつかせる。
「… ふふ、相変わらずなんだから」
そんな咲夜と雪美の様子を鈴香は目を細めて見守るように微笑み、蓮稀は蓮稀で雪美が滝に落ちないか心配でハラハラしている。
滝の涼風に包まれ4人の思いがそれぞれに交錯していく…
澄んだ水のきらめきとは裏腹にその場の空気には、雪美の知らない所で小さな火花がちらついていた。

