その瞳には、もう先ほどまでの穏やかさはなく底の見えない黒い執着だけが渦巻いていた。
「あの子も、早くこうなるべきなの」
花を持ち上げ優しく撫でる。
そして。
パチン… 首を落とす。
「あの子は咲夜さんを誘惑したから」
パチン。
「だからこうなって当たり前… 」
パチン。
「全部、全部、全部なくなればいいのよ」
咲夜の背筋を冷たいものが這い上がった。
雪美のことだ、間違いない。
「陽菜… やめろ」
咄嗟に陽菜の腕を掴む、その瞬間だった。
「… どうして?」
陽菜の顔から笑みが消えた。
「どうして止めるの?」
声が低くなる。
「咲夜さんを誘惑するものは全部消さないと」
「陽菜、落ち着け」
まただ、今日も始まった… 咲夜の言葉に陽菜の体の動きが一瞬ぴたりと止まる。
「… また、あの子の味方をするの?」
空気が凍る。
次の瞬間。
「許さないッ!!」
甲高い絶叫が庭中に響き渡った。
陽菜は自らの髪を両手で鷲掴みにし、狂ったように掻きむしる… 髪が何本も引き抜かれ、風に舞う。
目は見開かれ、白目が剥き出しになる。
口元は裂けるほど吊り上がり、笑っているのか泣いているのかすらも判別できない。
「許さない許さない許さない許さない!!」
何度も同じ言葉を吐き続ける。
まるで壊れた絡繰人形。
「咲夜さんは私の物なの!!」
地面を叩く、鋏を握り締める。
肩を震わせながら叫ぶ。
「ゆきちゃんの物になるくらいなら… 」
陽菜はゆっくり顔を上げ、満面の笑みで悪びれなく言った。
「咲夜さんが死ねばいいのよ」
ぞくり、と咲夜の全身に悪寒が走る。

