「何やってんの!!」
激しい水音を切り裂き鈴香の怒声が響く。鈴香は迷いもなく川に飛び込み雪美の腕を掴み一気に引き上げ、びしょ濡れの身体を抱え上げながら陽菜を睨みつけた。
「あんた自分が何をしたかわかってる?馬鹿なの!?」
後から駆けつけた咲夜もびしょ濡れの雪美に駆け寄った。
震える唇で何か言おうとする雪美を見た咲夜は怒り沸騰、胸の奥が締め付けられた。
「陽菜、ゆきに何をした!!!」
「ふえぇぇぇぇん!」
咲夜の姿を見た雪美は安心と恐怖が一度に弾け、咲夜に駆け寄り胸に顔を埋めて泣き出す… そんな中、陽菜は舌打ちし1歩下がりかすれた声で呟く。
「仕方ないじゃない。咲夜さんは私を見てくれないんだもん。それに私は酷い女、私は化け物… あの子は死んで当然なの!」
「ふざけないで!!」
鈴香の怒声が空気を裂いた。
「酷い女?化け物?だからって人を殺す?泣きたいのはゆきちゃんの方よ!」
鈴香の瞳は烈火のように陽菜を睨みつける。
その迫力に圧倒され雪美は咲夜の腕の中で小さく震えながら「すずかちゃん…」と、呟いた。
咲夜は唇を噛みしめる。俺が助けたかった男らしいところを見せたかったのに… 心のどこかでそんな小さな悔しさが湧くが表には出せない。
「私この子大っ嫌いなのよねー」
鈴香は呆れたように陽菜に対して溜息を吐いた。
「自分の思い通りにならなきゃ平気で人を傷つける。そんなの人間のすることじゃないわよ」
陽菜は涙声で叫ぶ。
「咲夜さん… 私、今可哀想でしょ!?こんな酷いこと言われてるの助けてみんなが私を虐める、私が化け物だから… 愛してるだけなのに… 見てなさい鈴香さん母上に言いつけるから!!」
咲夜は冷たい声で言い放った。
「誰が可哀想だって?可哀想なのはゆきだ。お前に殺されかけたんだぞ。言いつけたいなら勝手にしろ。親子揃って腐ってる。自分だけが主役だと思ってる我儘女なんか眼中にも無い」
咲夜の言葉を浴びた途端、陽菜の顔が歪む… 唇を噛みしめながら小さく呟いた。
「そんな子… 死ねばいいのに… 咲夜さんもその子を取るなら死んで… 」
陽菜は泣きながら逃げるように草むらの奥へと駆け去って行き、静寂が戻った川辺に、鈴香の深いため息が落ちる。
「…ほんと、やれやれ」
咲夜は黙って雪美の肩に上着を掛けてやった濡れた髪から一滴、透明な雫が落ちた。

