鏡と前世と夜桜の恋


次の瞬間、陽菜の唇がゆっくりと吊り上がった。

「… シねばいいのに」

言葉を失う咲夜の胸に陽菜はそっと指を這わし、手に持った鋏を意味深げに見つめる

「潰してあげる、綺麗に咲いた花ほど、雄を誘惑するでしょう?」

静かに静かに笑う。

「… だから全部摘まないと」

パチン――。

鋏が鳴る。


咲き誇っていた花が、茎から真っ二つに切り落とされ、花びらが崩れることなく音もなく地面へ落ちる…

咲夜は思わず目を見開いた。

「陽菜… 」

しかし陽菜は止まらない。

一輪。

また一輪。

美しい花を順番に切り落としていく… その動きは乱暴ではなく、むしろ異様なほど丁寧だった。







愛おしむように花へ触れ、微笑みながら首を刎ねる。

まるで花を慈しんでいるようで… まるで処刑を楽しんでいるようだった。

「咲夜さんを惑わせるものは、全部… 」

パチン。

「全部、潰してあげないと」

パチン。

「誘惑する女なんて… 」

パチン。

花壇には切り落とされた花が積もっていく







赤。

白。

黄。

紫。

色とりどりの花が、まるで血を流した死骸のように土の上へ横たわる… 陽菜はその光景を見つめ、心底嬉しそうに笑った。

「あの子も同じ」

その一言で、咲夜の全身が強張る…

咲夜の強張る姿を見た陽菜は鋏を握ったまま振り返る。