-- 翌日。
咲夜14歳、雪美12歳、蓮稀と鈴香17歳。今日はこの4人で滝を見に行く約束の日。

咲夜は大好物の鮎の塩焼きを買って待ち合わせ場所へ向かおうと早めに家を出た。
「咲夜さーん❣️」
…またか。
振り返らずとも分かる陽菜の声。俺の行く先に必ず現れ、まるで待ち伏せでもしていたかのように。
足を止めず通り過ぎようとした俺の腕に陽菜が絡みつく。
「咲夜さんこれからお出かけ? どこに行くの?また、あの子(雪美)でしょ?もうあの子ばっかり!やーだーぁ、私も咲夜さんと出かけたい~~!」
… 鬱陶しい。
誰と行くかなんて俺の勝手、それに雪美のことを悪く言う奴は絶対に許せない。
咲夜は小さく息を吐き陽菜の腕を払う。
「放せ、お前に用はない」
短く告げて、咲夜はそのまま塩焼き屋に向かった。後ろから何を言われても振り返らず… 今日は雪美と、蓮稀と鈴香、4人で滝を見に行くんだよ。
人の目など気にも止めず、しつこく " ズルいズルい " と駄々をこね拗ね始める陽菜。
「お前と出掛ける場所などない、出掛けたければ1人で出掛けろ、1人が嫌ならお前が大切にしている " ひとがた " と出かければ良いだろ」
陽菜の持っているひとがたはやけに耳の長いウサギのような人形、この習慣は母親、おすず譲りで…

おすずもまた茶色のくまのようなひとがたを大切にしていた。
元々『パンダ』が好きなおすずは、ひとがたを自分の友達… 相棒として肌身離さず持ち歩いていた。それを見た娘も同じように桃色のひとがたを大切に持っている。
どこに行くにも一緒でひとがたを振りながら歩く。
「あの子とも出掛けるけど今は咲夜さんとじゃなきゃ嫌なの!!やーだ、やーだーあー」
自分の我儘は何でも許される、思い通りになると思い込んでいる陽菜に話しが通じる訳もなく… これ以上は時間の無駄。
この女の相手をしていればみんなとの待ち合わせ時刻に遅れてしまう。
「ねえ、咲夜さーーぁん!!」
咲夜は縋りつく陽菜を無視しそのまま早歩きで塩焼き屋に向かった。

