-- 俺は、何を守れたんだろうな。
誰にも聞こえぬ問いを胸に沈め、咲夜は踵を返す。何日目だろうか。金と権利の檻へ戻る為… 京へ通う道はもう覚えてしまった。足音も、時間も、心の痛みさえも…
それでも足を運ぶ、雪美に知られてはいけない、近くて遠い距離。
「飽きず美味そうに食うよな… 」
声にすれば、全てが壊れそうで
雪美を傷付けること、雪美の世界に影を落とすことを咲夜は何より恐れていた。だから呼べない。ただ、無事でいることを確かめるためだけに日々を費やす。
「… っ」
団子の甘さに微笑む雪美を見て、胸の奥が静かに締めつけられる。
… 近くにいるのに会えない。
咲夜の日常は、陽菜とおすずに呼ばれれば服従し、藤川に呼ばれれば見えない場所に体罰を受ける。
咲夜の唯一の生き甲斐は、雪美が無事でいることを確かめる為、毎日京に通い日々を費やすこと。
政条家には帰れない、帰る家はあの家。
団子の甘さに微笑む雪美を見て、胸の奥が静かに締めつけられる。
触れられぬ想いほど、強く、確かに… 咲夜は踵を返し、人混みに紛れた。
―― 明日も、きっと来てしまう。
婚姻を約束された身… それが罪になろうと咲夜には関係なかった、今も昔も心の底から愛し想う人はただ1人。

