京から無事、政条家へ辿り着いたその日の夕刻… 咲夜は門をくぐった瞬間、胸騒ぎを覚えた。

嫌な予感は外れない。
座敷の奥、襖越しに聞こえてきたのは、聞き覚えのある2人の声… おすずと陽菜。
そしてそれを必死に制する父の低い声。
「息子達に何をしたか、こちらは全て露見しておる。何を好き勝手な事を!!いい加減に… 」
「親が親なら子も子… 」
おすずの声は、絹を裂くように冷たかった。
「その証拠はあるのかい? 咲夜さんは重罪犯、見つけ次第確保するのは当然のこと… それを逃がすなんてありえないね」
おすずには理屈も情も通じない。
案の定、聞く耳など最初から持ってすらおらず… それを理解し沈黙を貫く両親。
その話し合いの場に立ち会わせた咲夜は、ひとつ小さなため息を吐き、堂々と襖を開け放った。
「… 俺がなんだ?」
驚き、一斉に全員の視線が集まる。
部屋で寝ていた政条家で可愛がる愛猫までもが咲夜を見ていた。

「無実の罪を着せて、また俺をあの牢に戻すつもりか?生き地獄に閉じ込めて、何もかも奪えば満足か」
空気が張り詰める。
おすずは微笑んだ
その笑みは、慈悲とは程遠い。
「重罪は本来、死刑になってもおかしくはない… ここで雇われ、私が育てて来てやった情もある。だから生かしてやってるんだ。ありがたいと思って欲しいくらいだね、どいつもこいつも… 私に恩のある奴はいないのかい!」
言葉が、骨に触れる。
咲夜の拳が震えたが声は低く抑えられていた。

