雪美の横顔が、まぶたの裏に浮かぶ… 泣いてはいなかった、身体に痣はあったが、あの頃と変わらない笑顔で幸せそうに団子を食べていた。
俺が声を掛けられたら…
俺が一歩踏み出せたら…
守る、離れないと決めた。それが正しいと自分に言い聞かせてきた。
だが正しさはいつも心を救ってはくれない。
咲夜は歯を食いしばり喉の奥で熱いものを押し殺した。
「……っ」
悔しい。
歯痒い。
叫び出したいほどに…
それでも列車は止まらない。過ぎた時も口に出来なかった言葉も、引き返すことは許されない。
次は、次こそは…
誰にともなく誓いを立て、咲夜は暗くなりゆく窓に映る己の顔を睨んだ。
その目には、未練と覚悟が同じ重さで宿っていた。戻る列車は無情にも夜へと走り続けた。

