「すまない、大丈夫だ… 」
こうなるのも当然… 1年も待たせてたんだ。それでも、たとえ待っていなくとも、せめて一目だけでも良いからゆきに会いたい。
咲夜は歯を食いしばり、ふらつく足取りで京の町を歩き始めた。
人の流れに紛れゆきが行きそうな場所を1つ、また1つと辿ってゆく…
ーー やがて夕暮れ前。
一軒の団子屋の前で咲夜の足が止まった。
「ゆき… 」

桜柄で白い、春を映したような着物を纏った雪美がそこにいた。みたらし団子を幸せそうに頬張るその姿…
ゆきは生きている、良かった、元気だ。
その事実だけでも胸がいっぱいになり咲夜は涙を堪えた。
咲夜は気付かれぬよう背を向け、雪美の後ろ向きに腰を下ろす。本当は今直ぐにでも名を呼び… 今すぐ抱きしめ " 迎えに来た " と、告げたい。
だが――。
(今の俺にその資格があるのか)
濡れ衣を着せられ脱獄犯として追われる身… 名乗り出れば雪美も共犯扱いされかねない、人生までも汚してしまう。
何も知らぬ雪美は幸せそうに団子を食べ終え
「ご馳走様でしたー!」
元気よく手を合わせ、立ち上がりそのまま団子屋を後にする。咲夜は唇を強く噛み締めた、雪美がこれから約束の場所へ向かうなど知る由もなく…
「…くそっ」
追いかけたい
けど、その一歩がどうしても踏み出せない。
その時だった。
「咲夜様、少しよろしいでしょうか… 」
声を掛けてきたのは共に京へ来た付き人。
「何だ?ゆきの無事は確認した。俺はこのまま向こうに戻る。手短に話せ」
「実は… 」
咲夜の心の中は空っぽになった。付き人の言葉をまともに聞き取れぬまま、茫然と雪美の後ろ姿をただ見送った。

