「さくのバカ、私はさくが大好きなのに...」
泣きながら咲夜の手を振り払い、居ても立っても居られず雪美はた途方に暮れたようにただ来た道を戻り歩いていた。
どうして?
蓮稀はさくのお兄さんじゃない。
ゆくゆくはみんなで家族になるの… 私が何?どうして関わってはいけないの?
頬を伝う涙を拭っても次から次へと溢れ… 夏の日差しは容赦なく照りつけて来るのに雪美の心の中は冷たかった。
「うわあああああん!」
考えれば考える程答えが出ない、家族はみんなで仲良くするものでしょ?私はその環境で育って来た… 咲夜の言葉に胸を痛めた雪美は道のど真ん中で泣き出した。
道のど真ん中で大泣きしていた雪美を見つけた蓮稀は呆れたように声をかけた。
「また泣いているのか、そんな大きな声で… 」
「さくは分からず屋なの!」
涙を拭いもせず訴える雪美を蓮稀は近くの土手まで連れていき、静かに頭を撫でてやった。
「蓮稀はどうして私が泣いている時傍にいてくれるの?」
雪美の問い、蓮稀自身も分からない
「何故… そこにたまたまお前がいるから?」
雪美は涙を拭き決心したように顔を上げた。
" 泣いてるばかりはダメね!さくと話してくる!" その言葉を聞いた瞬間、蓮稀は無意識に雪美の腕を掴んでいた。
「… 蓮稀?」
見つめ返す雪美に蓮稀は慌てて目を逸らしながら掴んだ腕を離す。
「いや、なんでもない… 」
不思議に思いながらも雪美は蓮稀に別れを告げて咲夜のもとへと駆け出す。
向かったのは咲夜がよく行く塩焼き屋。見慣れた咲夜の姿を見つけると、雪美は後ろからそっと抱きついた。
「さく、ごめんなさい… 」
咲夜は驚いたように振り返りすぐに照れたように笑った。
「俺こそごめん… 取られたくないんだ誰にもも… ゆきは俺の大切な人だから… 」
咲夜の言葉に雪美の頬も赤く染まる。
2人は互いに視線を交わしぎこちなくも照れ臭そうに幸せそうに笑い合った。
「送っていく、帰るぞ」
咲夜がそう囁くと雪美は小さく頷いた。日はすっかり落ち、夜風が提灯の光を揺らし手を繋ぎ歩く2人の足音が柔らかく響く。
突然雪美は思い出したかのように懐から包みを取り出し、照れながら咲夜に差し出す。
「お団子、買ってきたの。さくと食べたくて… 」
その言葉に咲夜の頬がふっと赤くなり、月の光の下でも分かるほどほんのり熱を帯びた。
2人は路地の角に腰を下ろす。串についた団子はほのかに甘く、冷めていた。
雪美が1つ囓ると咲夜は恥ずかしそうに笑い、差し出された串の先を受け取った。
「一緒に食べよう」
嬉しそうに微笑む雪美。
月明かりと団子の甘い匂いが、夜を柔らかく包み込み内心感極まる咲夜。
「… さく?」
咲夜は何も言わずぎゅっと雪美の手を握り返し、心の中で静かに誓った " この小さな幸せをずっと守り続けたい " と。
そう誓ったばかりの
… とある夕暮れの事だった。

