最終列車が迎える夜の気配が残る刻
日の落ちた村は静寂で、だからこそ恐ろしい。一歩踏み出すごとに追手の影が脳裏を過ぎる。
それでも咲夜の足は止まらなかった。
捕まれば終わる、ゆきにも会えなくなる、今度こそ命は無い、行かなければ…
「ゆきがいなきゃ俺の生きている意味が、終わる」
雪美の名を胸の奥で何度も呼びながら、咲夜は追われる身であることを承知の上で傷も癒えぬまま、自ら闇の中へと身を投じることを決意し飛び出した。
「さ、咲夜様… !!!」
この気持ちが、恋と言うものか
それとも、破滅の道を辿るのか
その境を咲夜自身も知らないまま…

咲夜は付き人を伴い、人目を気にし顔を伏せつつ最終の列車に乗り込んだ。
蒸気の唸りと共に景色が流れ始めても、胸にあるのは1つの名だけだった。
「咲夜様お身体は… 」
「問題ない。ゆき、ゆき… 」
列車の揺れに揺られる距離が更に長く感じる… 夜が明け、京へ着いた咲夜は慌てて列車を降りた。
癒えきらぬ足を引きずりながら約束の場所へと向かったが… そこに雪美の姿はなかった。

待たせ過ぎたのだ
ゆきにとって俺のことなど、もう――。
そう思った瞬間、力が抜け咲夜はその場に膝をついた。
「さ、咲夜様!!!」
慌てて駆け寄った付き人は咲夜の身体を支え、心配そうな表情を浮かべる。

