「咲夜様、こちらを… 」
ゆりねが差し出したのは竹の小さな万華鏡だった。

「本来なら蓮稀様と鈴香様が、咲夜様と雪美様の婚礼の日にお渡しするはずだったものです」
「…そ、そうだ蓮稀と鈴香は… 」
「京の寺にて供養し埋葬いたしました。おすず様が蓮稀様の亡骸を欲した為、早急に手配を… 」
どこまで執着する気だ、亡骸までも自分のものにしたがる… 気持ち悪過ぎて吐き気がする。
「… よかった」
咲夜は万華鏡を胸に抱き静かに泣いた。
「行きましょう、仲間がすぐそこまで来ています」
鍵が開き、ゆりねから着物を渡される。屋根裏を抜け、梯子を降り、2人は外の世界へ逃げ出した。
ゆりねの後を追いかけ走ろうとした咲夜は身体ボロボロで走れず足がもつれた。
「… っ」
「咲夜様…!」
「大丈夫だ… 行ける… 」
そう言いながら咲夜は必死に足を引きずり牢屋敷から離れるため前へ出ようとするが思い通りに動かない、視線はただ一方向… 雪美のいるはずの方角を見ていた。
「雪美のところ… 行かなきゃ… あいつらの手の中に、まだ… 」
言葉が途切れ膝が崩れる。
「… ここではまずいですね」
ゆりねは咲夜を支え、短く判断した。
「私が囮になります。咲夜様、この道をまっすぐ行けば私の仲間が待っています… どうかご無事で雪美様の元へ。… 必ず、会ってください」

