鏡と前世と夜桜の恋


朝日が明け、今日もおすずと陽菜が乱れ狂った後、咲夜は牢の中でただ一点を、思考を止めなければ正気を保てないような目で見つめていた。





ーー そこへ微かな足音が近付く

次は藤川の暴行の時間か… 藤川の顔の半分は焼け爛れていて、暴力を受けている間、本物の化け物を見ている感覚になる。


この異常な行動が咲夜の日常になっていた。

暗闇の向こうから聞き覚えのある女の声がした。

「咲夜様、咲夜様…!ゆりねでございます」





その名を聞いた瞬間、咲夜は弾かれたように顔を上げ、牢の柵を掴み、声を張り上げる。

「ゆ、ゆり!? ゆきは… 雪美は無事か!?」

「咲夜様、お静かに… 」

ゆりねの制止に咲夜は荒れた呼吸を押さえ込む。

「…ゆり、元気だったか… 」

「お迎えが遅くなり誠に申し訳ございません」

ゆりねは咲夜の安否を確認すると、周囲を警戒しつつこれまでの経緯を一気に語ってくれた。



「お父上は蓮稀様の死を未だ受け入れておりません。挙句咲夜様まで捕まり… 文さえも罪人の家系と言われ届けてもらえずでした」

「……。」

「私の仲間に探りを入れさせた所、咲夜様は無実。この事を知った、政条家はその朗報を聞き雪美様のお父上に相談をした所…」

「ゆきの父上にか!?」

「雪美様の父上が私を京に送って頂き、雪美様の無事を確認し、咲夜様を逃がしに参りました」

何度も何度も死のうとして死ねなかった、生かされ続けていたこの地獄が終わる… 1年がこんなに長いとは…

" 解放 " その言葉が脳裏によぎり、今にも大声で泣き出したい、溢れ出しそうな涙を必死で堪える。