鏡と前世と夜桜の恋


ーー 更に時は流れ、監禁されて1年は過ぎた。いつこの地獄が終わるのだろうか。




咲夜は仰向けのまま薄暗い天井を見つめていた。視線を動かしても逃げ場はない。あるのは、静まり返った時間と胸の奥で軋む想いだけ。

咲夜は今日も鎖で繋がれていた… いや、繋がれているという表現すら、生ぬるい。


鎖は咲夜を逃がさない様に縛られ、着物は汚れ、肌は骨に貼り付き、目は光を映さない… 生きているはずなのに、死体とほとんど大差がない。

(ゆきは… 今、どうしてるかな)

名を呼ぶことすらここでは叶わない。声にすれば、何かが壊れてしまいそうで、ただ心の内で愛おしい名前を繰り返す。




(迎えに行けなくて、すまない)

己の無力さが骨の奥まで染みていた。守ると決めた、幸せにすると誓った。それなのに手は届かない。

(俺が、ゆきを…)

悔恨が喉元までせり上がり咲夜は小さく息を吐く。涙は出ない。ただ、重い。

(せめて、苦しんでいなければいい)


それ以上は望めなかった。笑っていてほしいなど贅沢だ。ただ痛みのない日々を、恐れのない夜を。

(それだけでいい)

天井の木目が滲んで見える。目を閉じれば穏やかに微笑む雪美の面影。

(必ず… 迎えに行く)

雪美と交わした約束… 諦めきれないその誓いが、咲夜のことをまだ生かしていた。