「咲夜は死んだ!お前は俺と一緒に生きていくんだ!!!」
雪美は着直した着物をまた自分で脱ぎ、身体中についた痣や切り傷を申又に見せる。
「貴方と一緒に?冗談じゃない。私の身体に付いたこの痣もあの切り傷も全て貴方が付けたもの… 貴方と生きて行くなど私の命は幾つあっても足りません… 」
図星を突かれたのか黙り込んだ申又に雪美は言葉を続ける。
「それにさくなら… こんな傷1つ私に付けませぬ」
雪美の裸を見た申又は、悪びれた様子もなくいやらしい目付きでニヤニヤ笑う。
「言う事を聞かぬお前が悪いんだ、俺の前で脱いで… また抱かれたいのか?」
この人は何を言っても無駄。
抱き寄せた雪美の身体を再び乱暴に抱き始める申又… 感情がすり減り、濡れず、感じる事さえも出来ない雪美の脳内は咲夜の笑った顔が映し出されていた。
行為が終わり… 髪を結い、着物を直した雪美は申又が満足し眠った隙に急いで屋敷を出た。
本当は団子屋に寄りたかったけど
今日は寄らずに直接…
走る、息が切れても約束の場所へ。
――申又の言葉は嘘。
――さくは、生きている。
最終の列車が来るまで雪美は何時間も立ち尽くす。
「さく、どうして… 」
人の波を見つめながら胸の奥が静かに軋む。
さく、なぜ来てくれないの?蓮稀の無事を確かめたら迎えに来ると…
そう約束したのに。
-- 信じて待ち続けてもう半年。
それでも雪美は今日も変わらず約束の場所で待っていた、迎えが来るその日まで…
ただ無情に時が過ぎていた訳ではない。
表向き、政条家は沈黙を守っていた。息子を失った不幸な家として頭を垂れ、涙を隠し、おすず一家には盾つくことなく従っているように見せていた。

