それは真実か否かも分からぬ言葉だったが、申又はそれを盾にし雪美の抵抗を力でねじ伏せた。
「……。」
この人に抵抗しても意味はないと身体が先に覚えてしまった。叫べば傷が増える。拒めば更に奪われる… それならば。
(生きるしかない)
――迎えは、来る。
――さくは、必ず来てくれる。
咲夜との約束を支えに、雪美は『耐える』という生き方を選び、1日また1日… 月日だけが淡々と流れていった。
咲夜が監禁されていることさえ知らぬ雪美は屋敷の中で静かに覚悟を固めていた。迎えが来るその日まで… 心を折られぬよう、考え、耐え、息を潜めて。
泣き虫ではいられない… 女を侮るな。
その日を境に雪美は露骨な抵抗を辞め、強い女として生きることを決心した。
半年後…
雪美は牢から出され表向きは普通の暮らしになっていた。形ばかりの自由を与えられても… 心は常に1人の男に向いていた。
今日も鏡の前で伸びた髪を結っていると鏡越しで視線が合う申又は下卑た笑みを浮かべる。

「…今日も御相手をせねば外出は許されませんか?」
「毎日毎日… いつまで咲夜を待つ気だ。なぜ、あやつなのだ!」
雪美の身体を押し倒した申又は、いつも髪にさしている雪美の簪を取り上げる。
「大切に持っているコレは、あやつから貰ったものであろうが!!!」
顔の横、畳に突き立てられた簪の音が乾いた響きを残した。
「ええ、さくから頂いた大切なものです」
申又に対し恐怖はあった、それでも雪美は心までは従う気はなく目を逸らさなかった。
「それで傷をつけられるなら、さくの痛みだと思い、私は幸せです」
「くそっ… 」

