鏡と前世と夜桜の恋


言葉が終わるや否や、政条家の両親はその場に崩れ落ちる… 嗚咽が畳に落ち、部屋の空気を重く沈ませる。

報告に訪れた女の名は『ゆりね』

世を忍ぶ仮の姿では、艶やかな顔立ちと美貌を武器に遊郭で花魁を務め、男達を酔わせ直接噂や裏話を引き出す女… だがそれは表の顔に過ぎない。


真の姿は政条家に長年、密かに忠誠を誓い影となって仕えてきた女忍者だった。

(鈴香様に続いて… なぜ、蓮稀様まで)

蓮稀が連日おすずに呼び出されていたこと。その折、明らかな暴行の痕。

咲夜もおすずに呼び出されていた。

それらを思い合わせれば " 咲夜が狂い兄を殺した " という筋書きはあまりにも不自然…

誰もが腑に落ちぬ思いを抱えたままこの知らせを受け取った。

「……。」

それもその筈、鈴香の死の知らせは死後かなりの時が経っていることは誰もが知っている。

それに対し、蓮稀様の亡骸は顔色はまだ保たれ、肌もまだ硬直しておらず… 腐敗の兆しもほとんど見られなかった。


「…2人を寄り添わせ、教会に座らせたのは咲夜様では無いかと。蓮稀様は私共に雪美様を至急、京へ逃すよう命じられておられました。雪美様の安否も心配です」

皆、口にはしないが薄々勘付いていた。誰が犯人なのか… 日々息子達の行動を見ていて確信があった。

その時、使いから更に連絡が入った。


「旦那様。奉行所より、蓮稀様のご亡骸を引き渡すよう仰せが… 」

父は目を伏せた後、首を横に振った。

「いや… 2人の亡骸は、共に京の寺へ埋葬する」

それは拒絶であり決意でもあった。

真実が明らかになるまで、2人を“ 罪の証 ”として扱わせはしない。その夜のうちに手配は整えられた。