何故俺達はここまで踏みにじられなければならない。欲の為に奪い従わねば壊す、それがこの世の正義なのか。
己の欲が全て…
自分の思い通りにならないならシね、自分のものにならないのならシんで当然?
俺達が何をした?
咲夜の願いはただ1つ… 誰にも邪魔されず穏やかな時間をゆきと過ごすこと。
ただ、愛する人と共に生きたいだけなのに… 他は何も望まない。
どうして誰でも掴めるはずの幸せが俺達には叶わない?
それさえ叶わぬのなら… この世は最初から俺達を生かす場所ではなかったのだろうか。
闇の底で咲夜の願いは
血と共に静かに沈んでいった。

目を覚ました咲夜は冷えた空気の底にいた。ここは鈴香と蓮稀が最期を迎えた… あの牢。
鉄の匂いがまだ床に沈んでいる。洗い流されたはずのものが洗われきらず湿り気となって残っている。
逃げ場はないと理解した瞬間、胸の奥がゆっくりと潰れていった。
俺もそのうち…
言葉にする前に喉が詰まる。
必ず追いかけると約束した、迎えに行くと確かに言った、それなのに今頃、ゆきは申又に…
ゆきの初めては俺のはずだった、その日を待ち遠しく待ち望み、ずっと大切にして来たのに。
もし、ゆきまで鈴香と同じ事になったら… 自分の考えに一気に血の気が引き、悪い結果ばかりが脳裏をよぎる。
膝を抱え背中を丸めると足元の冷たさが骨に染み込んでくる。床に残る兄の痕と、転がる“ 薬指 ”から目を逸らせない。
「ははっ… 」
可笑しい。
狂ったように笑いが勝手に溢れる
喉の奥から引き攣った音が漏れ自分でも止め方が分からない、笑っているのに何も楽しくはない。

