鏡と前世と夜桜の恋


咲夜は雪美の手首を掴み己の身体で庇うように牢の影へ押し戻した。と、同時に扉を閉め雪美を隠すように覆い被さる。

「……っ」

息を殺す雪美の胸元で咲夜の呼吸は荒れていた。足音はすぐ傍まで来て、やがて遠ざかる…

静寂が戻った刹那、咲夜は立ち上がろうとして顔を歪めた。


「さく… その足、どうしたの… 」

雪美の目が震えた。

「… 大丈夫、少しひねっただけだ」

それ以上は言えなかった。

この牢へ引き立てられた時、2度と忘れられぬ屈辱と共に逃げ道を断つ為、おすずに性. 暴力を受け足を折られたなど… 雪美に告げるなど出来るはずがなかった。

「…逃げるぞ」


平然を装い激痛を噛み殺しながら咲夜は歩き出す。町奉行所の闇を縫い2人は無事脱け出した。

「さく… 私の背中に乗って」

「…ゆき」

「さく、もう大丈夫だからね!」

抜けているようで、芯は誰よりも強い… 愛おしい雪美の背に身を預け、咲夜は幸せそうに小さく微笑んだ。


「… ありがとう、ゆき」

自分よりも大きな咲夜をおんぶする雪美は歯を食いしばり必死に歩いた。

雪美ほど負けず嫌いの女は居ない

雪美は誰にも見つからぬ場所、ゆっくり咲夜の傷を手当てできる場所を探した。