-- あれからどれほど時が流れたのか。

気付けば雪美は鈴香が長く囚われていた同じ牢屋敷の奥、牢屋の中にいた。
窓以外、闇と冷気に閉ざされた牢の中は何もなく今の時刻さえ判別がつかない。
石の床から這い上がる冷えが、雪美の体力と気力を少しずつ奪っていた。
雪美が気を失うまで痛め付けた申又は、咲夜から引き離す為だけに雪美を迷いもなく牢へ投げ込んだ。
着物も、櫛も、守りのように持たされていた小さな袋すら奪われ身一つ。晒された肌に容赦なく冷気が噛みつく。
「…寒い」
声にした途端、弱さが滲み出る気がして雪美はぎゅっと唇を噛みしめた。
さくは… 無事だろうか。
あの時、乱暴に引き剥がされた背中。振り返った一瞬、確かにこちらを見ていたさくの悔しそうなあの目。
(ここに入れられたってことは…)
鈴香と同じ道を辿るのだろうか。思い出そうとしなくても体のあちこちが鈍く痛み答えを告げていた。
「…なんで…どうして…」
誰に向けた言葉でもない問いが、冷たい空気に溶けて消える。
その時、廊下の奥からかすかな音がした。
…コツ。
…コツ、コツ。
雪美は息を殺し耳を澄ますと、誰かがこちらへ近付いて来る。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
心臓の音がやけに大きく響く。
足音が近付くにつれ、胸の内側まで震えが伝わってくる。
(来ないで…)
祈るように目を閉じたその瞬間、鉄と木が擦れる嫌な音が牢の前で止まった。
逃げ場のない静寂の中、雪美は小さく肩をすくめ、次に訪れる現実をただ待つしかなかった。

