同時刻、咲夜は雪美を探していた。
蓮稀とおすずの屋敷に行くのに雪美は連れて行くのは危険だと判断した咲夜は " 家から出るな " と、伝えたのに… 雪美は家に居なかった。
「どうせまたあそこだろう… 」
咲夜は落ちていた木の棒を拾い、振り回しながら森道の茂みの中に入って行く。
蓮稀は体の傷を見られたとは言わずおすずの事を雪美に打ち明けたと話した。恐らく咲夜も同じ被害に遭っているだろうと。
「俺は… 」
辛いのは自分だけで良いと思ってた。ゆきが幸せなら、蓮稀の心がこれ以上潰されなければ… 蓮稀の話しに返事出来なかったが咲夜の反応を見れば一目瞭然だった。
鈴香を使い、雪美を使い。おすずのやり口はいつも同じ… 脅し、追い込み、逃げ場を塞ぐ、それを静かに陰湿に繰り返す。
その一部始終を蓮稀から聞かされた雪美は言葉を失っていた。
唖然としたまま胸の奥に溜まっていた何かが、ふっとほどける。
-- 咲夜は、裏切ってなどいなかった。
そう思えたことに安堵が広がる、けれど同時に胸の奥で小さな棘が疼いた。
自分は、知らない男達と。
そして… 蓮稀と。
誰にも言わず、見ないふりをしてきた出来事が咲夜の潔白を知った瞬間、罪として浮かび上がる。
雪美の体は微かに震えていた。
今まで内緒にしてきた話を、あの2人が自分に打ち明けた、それはきっとただ事ではない。何かがもう元に戻らないところまで来ているのかもしれない。
朝まだきの薄明るい刻…
" おすずと話しをつけに行く "
そう記された文を蓮稀と咲夜から受け取った雪美は思わず体が固まり顔を強張らせた。
雪美はじっとしていられなかった。
誰にも見つからぬよう、足音を殺し、身を隠すようにして、その場を離れていた。
まるで自分の存在そのものが、この因縁に巻き込まれてはならないと知っているかのように。

