雪美は胸の奥の痛みを抑えきれず、指を引っ込める。見てはいけないものを見てしまったような気がして、蓮稀の胸に顔を埋めたまま俯いた
知らなかった。
こんなにも傷だらけだったなんて…
誰にやられたの?ううん、問わなくても分かる… こんな酷いことをする人はあの人 (おすず) しかいない。
部屋に気まずい沈黙が落ちる。
だがその静けさは、確かに二人の距離をほんの少しだけ変え始めていた…
気まずい空気を変える為、話を変えようと蓮稀はわざと軽い調子で口元を歪めた。
「…ほら、見惚れていたではないか」
「ち、違う… //」
即座に否定する雪美の頬は分かりやすく赤い。その様子が可笑しく、同時にひどく愛おしく蓮稀は思わず息を緩めた。
「そんな顔で否定されてもな」
「違うの!けど… 」
「けど?」
視線を泳がせる雪美に、蓮稀はそっと距離を詰める。からかう声音とは裏腹に指先は慎重で触れる前に一瞬ためらった。
「…今日は色々あったから癒して欲しいの//」
雪美の口からこぼれた思いがけない言葉に、蓮稀は一瞬きょとんとしたがすぐに口元に意地の悪い笑みが浮かぶ。
「…それ、本気で言ってるのか?」
「…… // 」
動揺を隠そうとする雪美を見て、蓮稀はわざと一歩近付き、低くからかうような声で続ける。
「抱いて欲しいのなら自分で脱いでみろ」
「……はっ!?」
雪美は一気に顔を赤くし、言葉を失う。
「な、何を言って… 意地悪…!」
慌てて胸元を押さえ、視線を逸らすその仕草が、逆に蓮稀の心をくすぐった。
「冗談だ、雪美の反応が見たくてな」
「もう… // 」
蓮稀の余裕な表情が余計にドキドキさせる。ぷいっと横を向きながらも負けず嫌いの雪美は自分から着物を脱ぎ始め…
蓮稀は視線を逸らさず黙って雪美の行動を眺めた。
からかいの裏に確かな優しさを滲ませて…
言葉はそれ以上要らなかった、互いの温度を確かめるように近付き静かに息が重なる。
夜は深く外の気配も遠い。
障子越しの灯りが揺れ2人の影が重なった。
「雪美… 大丈夫か?」
「… うん//」
それ以上のことは誰にも見えず、語られない。ただ張り詰めていた心はほどけ確かに、2人だけしか知らない“ 甘い夜 ”が、流れていた。

