蓮稀の腕の中にいれば理由も理屈も要らなくなる。それでも咲夜の顔が脳裏をよぎる… 子供の頃から自分を想い、信じ、疑いなく手を伸ばしてくれてた人。
(裏切りたくないけど咲夜にはおすずさんが…)
蓮稀が何も言わない事が胸に小さな棘を残す。抱き締めるくせに、触れるくせに、想いを語らない。
(どうして何も言ってくれないの…)
言葉にしてしまえば壊れてしまう関係だと雪美も分かっていた。それでも、言われないままでいるのは、想われていないのと同じに思えてしまう。
-- 私はどうしたらいいの?
自分の気持ちさえもう分からなかった。咲夜といる未来も、蓮稀といる今もどちらも選べず
このままではどちらも失う予感だけが胸に残る…
雪美はそっと蓮稀の着物を握りしめた。離れたいのに、離れられない、求めてはいけないのに求めてしまう。
(…ずるいよ蓮稀)
心の中でそう呟きながら雪美はただ静かに目を閉じた。朝の光は優しく差しているのに、胸の内だけが賑やかなままだった。
-- ある数日後の夜更け
雪美は母に使いを頼まれ、文を懐へ入れ早足でどこかに向かって歩いていた。灯りの少ない道は潮の匂いが濃く風が衣の裾を引く。

曲がり角を曲がった時、数名の男の人影が見えた。
声をかけられた記憶は曖昧で… 次に思い出せるのは、乱暴に腕を掴まれた冷たさだけだった。
「な、何を… 」
突然のことで頭は回らず、ケラケラ笑う男達に無理矢理引きずられ雪美が連れて行かれた場所は近くの河岸… 水面は夜空同様、静かで星の欠片を映していた。
「嫌っ… 」
雪美の着物はボロボロに引き裂かれ、男達は楽しみながら何度も何度も雪美の体に切り傷、青痣、噛み跡を落とす。

