「さっさと立ちなさいよ!」

イザベルはヴァイオレットの質問に答えることはなく、怒鳴り付ける。ヴァイオレットがゆっくりと立ち上がると、イザベルは両手を腰に当てながら言った。

「私ね、もうシャーデンフロイデがどこに潜んでいるのかわかったのよ」

その言葉に痛みでボウッとしていたヴァイオレットの頭は、一瞬にして正常になる。痛みはまだ体に走っていたものの、ヴァイオレットは驚いて訊ねた。

「本当ですか?謎の女性の声の正体もわかったのですか?」

「声?何なのよそれ。知らないわよ。シャーデンフロイデが姿を見せた時に、使用人の一人に飛行魔法をかけてシャーデンフロイデの後を追わせたのよ。そしたら、山の頂上付近にある洞穴に入って行ったんですって!やっぱり魔法が使えるといいわね〜」

「知らないんですか?シャーデンフロイデに家を壊された人たちは、みんな話していました。「家から逃げてください」という女性の声がしたと。街の人から話をお聞きにならなかったのですか?」

「下等な非魔法家系の人間の話を聞いて何になると言うの?くだらない。魔法が使えない無能な連中だというのに!」

「謝ってください!その言葉を撤回してください!」

イザベルの言葉にヴァイオレットは体の痛みすら忘れ、彼女に詰め寄る。ヴァイオレットの心の中では今、怒りが燃え上がっていた。