人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

王族や貴族は全て魔法家系だ。そして、魔法家系は優秀な子孫を増やすために同じ魔法家系と結婚する。非魔法家系のヴァイオレットが嫁げば、すぐに偽物だとバレてしまう。

「私ね、結婚するなら都会の大きな屋敷に住んでいる貴族か王族がいいの。田舎のプリンセスなんて絶対になりたくないわ！だから代わりに嫁いでちょうだい。もしバレても歳が離れてるんだから、相手は大喜びよ」

「小汚いメイドのお前の代わりはいくらでもいるが、イザベルはこの世界でたった一人だ。ランカスター家の宝物だ。宝物に相応わしいのは美しい宝石箱。野蛮な人狼が暮らすところじゃないんだよ」

二人に「嫁げ嫁げ」と言われ、反論することが物理的にできないヴァイオレットはスカートを強く握り締めて泣くのを堪える。結局、魔法家系にとって非魔法家系の人間は使い捨てのきく駒にすぎないのだ。

ヴァイオレットに拒否する権利など、最初から与えられたいなかった。



ヴァイオレットが身代わりの花嫁になることに、ミモザはヴァイオレット以上に混乱し、そして激しい怒りを浮かべていた。ヴァイオレットを抱き締め、ただ悔しげに震えた声で言う。

「あたしたちは、幸せになることすら許されないんだ。どんなに頑張っても奴隷なんて、こんなの酷すぎるよ！」