ヴァイオレットがイヴァンと共に応接室に入ると、ソファにはメイド服をきっちり着こなしたミモザが座っていた。その顔に表情はなかったものの、ヴァイオレットの目にはミモザが疲れているように見えた。
「ミモザ、夜会の時以来ね。わざわざ来てくれてありがとう」
ヴァイオレットが声をかけると、ミモザは薄く笑って「こんにちは。お邪魔します」と言う。ヴァイオレットとイヴァンはミモザの前に座り、イヴァンが口を開いた。
「一体、本日はどういったご用件で?」
イヴァンの問いを待っていたかのように、ミモザは自身の傍に置かれた大きな鞄をテーブルの上に置く。
「イザベル様からこちらをイヴァン・ブルースター様にお渡しするように言われ、本日はお伺いしました」
ヴァイオレットとイヴァンは顔を見合わせる。イザベルの性格をよく知っているヴァイオレットは、「嘘でしょ!?」と言いたくなった。
イザベルがあの夜、イヴァンに「私が相応わしい」と迫ったのは、フェリシアーノに相手にされず、豪華なドレスを身に纏っているヴァイオレットを見て羨ましくなっただけであり、イヴァンに対して恋愛感情があるわけではないのは、誰が見てもわかる。

