人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

話すことができなくなったヴァイオレットが声にならない声を上げていると、無言だったチャールズが言う。

「イザベルはブルースター家に嫁がない。お前が嫁げ」

どういうことですか、ヴァイオレットはそう訊ねたいものの舌が動かないため話せない。イザベルはフンと鼻を鳴らし、腕組みをして話す。

「イヴァン・ブルースターって一流の学校を首席で卒業した優秀な人だったのに、全然社交界に出ずに領地に引きこもってんの。その理由が何と、学生時代に人狼に噛まれて人狼になっちゃったからですって。毛むくじゃらの牙の生えた引きこもりのおっさんと結婚とか、絶対に嫌だから!」

イザベルが間違った知識を持っていることを、本ばかり読んでいるヴァイオレットはすぐにわかった。だが、その事実を伝えることはできないまま話は進んでいく。

「ブルースター家は王家との繋がりが深い家。この婚姻は結んだ方がランカスター家にとって有益だ。だが、我が愛するイザベルが望まないことを私はしたくない。だからお前に嫁いでもらうんだ」

ヴァイオレットは色々と突っ込みたくなり、声にならない声を出して首を横に振る。イヴァンは社交界に顔を出していないのだから、イザベルの顔を知らないだろう。年齢や見た目はヴァイオレットでも問題ないが、ヴァイオレットではカバーし切れない問題がある。ヴァイオレットは魔法が使えない。