目に涙を浮かべながら笑う市民にフェリシアーノは笑いながら手を振り、お礼を言われてイヴァンはどこか照れ臭そうにしていた。

「魔法ってすごいですね。シャーデンフロイデを追い払って、建物を修復して、すごいです」

ヴァイオレットはイヴァンたちに声をかける。すると、フェリシアーノは「すごくなんかないよ」とすぐに返す。

「誰にだって使える魔法があるよ。ヴァイオレットだって、今も魔法を使ってる。ね?」

フェリシアーノはイヴァンをチラリと見て言った。言葉の意味がわからず、ヴァイオレットは首を傾げる。ヴァイオレットは非魔法家系であり、魔法を一度も使えたことはない。

「それはどういう意味ですか?」

ヴァイオレットは訊ねたものの、フェリシアーノがそれに答えてくれることはなかった。考え込んでしまうヴァイオレットはイヴァンに「何か食べよう」と声をかけられ、手を握られる。

「私は非魔法家系です。魔法は使えません」

隣を歩くイヴァンにヴァイオレットは声をかける。イヴァンは「そうだね。知ってる」と頷く。

「一体、どういうことなのでしょうか?」

ヴァイオレットは前を歩くフェリシアーノの背中を見つめる。フェリシアーノはサクラとオリバーに楽しそうに話しかけていた。

「フェリシアーノは、ポエムみたいなことを言う時があるから深く考えなくていいよ」

イヴァンにはそう言われたものの、ヴァイオレットの胸はどこかモヤモヤとしており、それが晴れることはなかった。