ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼

「惚れ直したよ」

 それは篠井くんと思えないくらい小さい声だったから、え?と聞き返す。
 篠井くんがスゥ、と息を吸った。

「中学生の津木沼音葉に、すっげぇドキドキした!」

「……!」

 次の瞬間、ギュッと力強く抱きしめられた。
 嫌でも篠井くんの大きなドキドキが聞こえてきて、それが私にも伝染する。
 そして、かすれ気味の小さな声が耳に届く。

「もっと凄い男になるから……待ってろ」

 篠井くん。
 気付いてないの?

 ひとりぼっちだった私の世界を、篠井くんが変えてくれたんだよ。
 こんなに凄い人、他にいないのに。

 私は優しくてあったかい背中をギュッと抱きしめ返して答える。

「うん……待ってる」

 私も凄い人になって、待ってるね。