恭平さん、私、昨日芝居に行ってきたの」



舞子は名前のとおり、舞い上がっていて、頬がほんのりと赤みを増している。




芝居ということは舞台を見に行ったのか。



高校生にして、舞台を見に行くのは大人だなと恭平は感じたが、やけに舞子がハイテンションだったため、そこは突っ込まないことにした。



「それで、どんな内容だったんですか、舞子さん」



毎週会っているうちにふたりは名前に『さん』付けで呼び合うようになった。



最初は舞子に「本田さん」と呼ばれていたが、上級生にそんな呼び方をされるのはと、恭平が渋った結果、そこに落ち着いた。



「ロマンスよ、ロマンス」

「ロマンスなんて、一番ほど遠いんすけど、俺」



「たしかに。恭平さんは元気にかけっこしている方がお似合いだわ」

「そこは嘘でも『ロマンスって言葉は恭平さんにぴったり』って言ってくださいよ。かけっこって子どもじゃないですか」




1つしか違わないのに子ども扱いされて、恭平はムッとした。




子どもっぽいところを指摘されたのは図星だ。

現に、今日も英語の課題で残されているのだから。