「だからお兄ちゃんは今一生懸命勉強をして、良い高校に入学しようとしてるんだよ」
「それって、絵美お姉ちゃんを養うため?」

「そういうこと」
健太は笑いながらも照れくさそうに頬を赤らめている。

「花子ちゃんにもきっと、そういう大切な人が現れるよ。だから人のものばかりほしがってちゃダメだ。本当に欲しい物が見つかった時に、両手がいっぱいになっていたら受け取ることができないから」

健太の説明に花子はすっかり納得した顔になっていた。
いつの間にか涙も引っ込んでいる。

「わかった! 健太お兄ちゃんのことも絵美お姉ちゃんに返すね」
「だから、健太はものじゃないってば」

そう訂正したけえれど、今はまぁいいかもしれない。
「それと、これはどうするのかな?」

健太が絵美の持っている万年筆へ視線を落として花子へ聞いた。