「――じゃあ、森の受け付けは済ませたから、先生は観覧席へ行ってるな。付き添い、頼むぞ、朔間」

「はい」

 何かあったら呼んで、と言いながら引率で来ていた担任の先生は行ってしまった。私は朔間くんと一緒に、出場者用の控室のすみっこで、全然治まらない心臓の音と戦っていた。

 今日は、朗読コンテストの本選の日。

 そんな日にどうして私たちが出場者用控室に居るのかと言うと、あろうことか予選を通ってしまったからだ。担任の先生に本選出場の五人に入ったと聞かされた時は、意味が分からなくて三回も聞き直してしまった。

 子供部門の五人、中高生部門の五人、大人部門の五人。合計十五人が、この本選のステージで朗読を披露して順位を決めるのだ。

 出場者一人につき付き添いが一人。引率の先生がそのまま付き添いになってる人も多い。控え室に約三十人がひしめき合っている。控え室の広さは十分だけど仕切りなんてないから、出場者同士よく見える。

 みんな私より上手そう……

 いまだに、どうして自分がここにいるのか分からない。何かの間違い何じゃないかと思ってる。

 やる気と自信に満ち溢れた他の出場者に圧倒されてしまい、身体の震えが止まらない。座っている膝の上で、両手をギュッと握った。