「……全然、説得力がない」

「えっ?!」

 今度は私が驚いて朔間くんを見た。

「やりたくない事、無理してやってるの、森さんだろ」

「そ、それは……」

 それはそうだ。朗読コンテスト、出たくないのに出ようとしてる。考えてみれば、エントリーは取り消し出来ないけど、熱が出たとかで当日欠席してしまえばいい。

 それなのに、どうして私は出ようとしているんだろう?

 口ごもってしまった私に、朔間くんはフッと笑った。

「まあ、いいや。ありがとう、森さん」

 そう言って彼がグイッとアイスコーヒーを飲み干したのと同時に、部屋の使用時間終了を告げる電話が鳴った。