絶望で倒れそうになった時、誰かがぐいと腕を掴んでくれた。そこに立っていたのは、朔間くんだった。

「大丈夫か? 倒れるかと思った」

「う、うん……」

 倒れないように膝に力を入れた。でも朔間くんは掴んでいる腕を離さなかった。

「剛里、森さん具合い悪そうだから、保健室に連れていくけどいいだろ?」

 突然の朔間くんの乱入に、剛里希星も気圧されてしまったようだ。ぷいっと取り巻きたちと離れていってしまった。

 朔間くんも私の腕を掴んだまま、教室を出る。どうやら本当に保健室へ行こうとしているみたいだ。

「あの……私、大丈夫だから……」

「でもさっき真っ青な顔してたし、やっぱ保健室で少し休んだ方がいい」

「うん……」

 正直なところ、授業に出る気分ではなかった。だから朔間くんに言われるまま、保健室へ行った。

 保健室には誰もいなかった。ドアの所に離席中の札がかかってたから、先生はすぐ戻ってくるとは思うけど。

 それまでベッドで休ませてもらう事にした。

 私がベッドに腰掛けると、朔間くんはその前に立つ。

「大丈夫か?」

 心配してくれた朔間くんの言葉に、私は頷いて返した。

「……聞こえちゃったんだけど、朗読コンテストに出るのか?」

 朔間くんにも聞こえちゃってたんだ。剛里希星の声、大きかったから。きっと教室中の人たちに聞こえちゃってただろうな。

「なんか……勝手に申し込まれちゃって……」

 膝の上に置いていた両手をギュッと握りしめてうつむく。